昭和30年代、殆どの家庭は貧乏だったと思います。
だから貧しくてもみんな平気でした。
靴下やズボンに接ぎ当てがあっても恥ずかしくはありませんでした。
尤も一部にすごく貧しい家庭の子もいて
子供は残酷ですからそういう子は苛めていました。
やはり人間は自分よりも下を創りたいものなのでしょう。
そんな時、5年生になって金持ちの子が現れました。
自動車会社の社長の子です。
日曜日にお城へ写生に行くことになり
彼の家の前に集まると運転手付きの黒い車があり
皆を乗せて行ってくれました。
降りるとき運転手がその子に
「帰りは来れませんからタクシーで帰ってください。」
とタクシー券を渡していました。
家庭科の時間、先生が朝食の献立を聞きました。
殆どの子はご飯にみそ汁、目刺しや漬け物などと答えていましたが
その子は紅茶とショートケーキ、フルーツと答え
先生も児童も沈黙してしまいました。
そんなある日、彼の家に遊びに行きました。
そこでおやつに出されたのはプリンでした。
私は見たことはあるけど食べたことはありませんでした。
一口食べてそのおいしさに吃驚しました。
この世の中にこんな美味しい物があるなんて。
勿体なくて全部食べてしまうのが惜しく、
ゆっくりゆっくり味わいながら食べていました。
するとその子は自分のをぺろっとたいらげると
まだ半分以上あった私のプリンにスプーンを入れ食べ始めたのです。
私はあせりました。
その子の家だからやめろというわけにもいかないので
そこからは彼と競争で食べたのです。
後半は全く味わえませんでした。
40年経っても忘れられない悲しい思い出です。
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