大物 Yさん その2

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寝台特急に乗り込むとすぐ車掌がやってきたので

「福山まで2枚。」

と言うと車掌が

「これは福山には停まりませんよ。」

「えっ、じゃあどこで降りられるんね。」

「次に停まるのは岡山です。

普通の特急料金だけいただくから寝台には入らないでください。」

とそこの椅子で岡山まで行くように言って立ち去りました。

するとYさんは飲んで気持ちよくなっていたので

そっと空いているベッドを見つけ友人とそれぞれもぐりこみました。

そしてうとうとしながら時間がたち、ふと列車が停まっているのに気づいて

外を見るとそこには京都の文字が見えたのです。

吃驚仰天したYさんは友人を起こしあわててドアに向かいましたが

なんとドアが開かないのです。

必死でドアを開けようとしていたら車掌がやってきて

「あんたら、どこにいたんね。岡山でずいぶん探したんで。」

「それよりはよー降ろしてくれー。」

すると車掌は

「ここでは降りられんで。

ここは時間調整のため停まるだけで乗降駅じゃ無いんよ。」

「じゃあどこで降りられるんね。」

「次に停まるのは名古屋よ。」

二人は絶句しました。

名古屋に着いたら連絡を受け待っていた鉄道公安官に連れられ

駅長室へ入れられました。

そして色々事情聴取を受けた後、名古屋までの乗車賃と

特急料金を支払うよう言われました。

Yさんはそれを全部払ったら福山まで帰れないと必死で交渉し

福山までの普通乗車券が買えるだけ残してもらい有り金を全部支払ったのです。

そして鈍行を乗り継ぎ、福山に辿り着いたのは翌日の昼過ぎだったそうです。