私は子供の頃、素麺が大嫌いでした。
その理由は酸っぱいからです。
意味がわからない方もおられるでしょう。
私の両親、とりわけ父親は酢が大好きでした。
その為素麺を食べるときのつゆは酢醤油だったのです。
普通の米酢に醤油を加えたものです。
これが子供の舌には耐えられません。
それなのに夏になるとしょっちゅうです。
今と違ってその時代、出されたものが嫌でも
他に食べるものはありません。
辛い思いで食べるしかありませんでした。
ですから心底、素麺が嫌いでした。
中学1年の夏のことです。
友達の家に遊びに行っていたら友達の母親が
「もうすぐお昼だけど素麺で良かったら食べていきなさい。」
と言ってくれました。
私は友達に小さな声で
「素麺は酸っぱいから嫌いだ。帰って食べてくる。」
と言いました。
友達は不思議そうな顔で「
「素麺は酸っぱくないよ。」
と言うのです。
ここの素麺のつゆは酢が少ないのかと思い
言葉に甘えてご馳走になることにしました。
そして出てきた素麺を見て吃驚です。
ガラスの器に入った素麺の上には缶詰のみかんやサクランボが載っています。
そして出されたつゆは見慣れたものと少し色が違います。
食べてみてさらに吃驚です。
とてもおいしいのです。
友達の母親が作ったつゆは現在の市販のつゆのような味でした。
素麺がこんなにおいしい食べ物だったとは。
その日家に帰ると私は両親に失った10年を抗議しました。
次から母親はつゆを作ってくれるようになりました。
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