下宿

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35年前、大学進学が決まり京都に下宿を探しに行きました。

大学で紹介されたところを回りました。

最初に行ったところは普通の一軒屋でその家の2階の一部屋に案内されました。

そこの奥さんが言うには家族同様で住んでもらえば良いから

中学生の娘の勉強を見てくれとのことです。

普通の下宿代を取り、只で家庭教師をさせようとの魂胆のようです。

考えさせて頂きますと次に回りました。

嵐電と言われる京福電鉄の太秦駅で降りました。

駅のすぐ隣が目指す下宿でした。

道路の向こうに大きなお寺が見えます。

下宿に行くと1階は薬局と家人が住み

2階に同志社大生の息子と立命大生が7人住めるようになっています。

部屋は4畳と狭く隣とは襖で仕切ってありますが

下宿代は4千円と安いのが魅力でした。

窓から見えるお寺のことを聞くと平然と

「広隆寺どす。」

と答えてくれました。

吃驚しました。

小学校でも習った国宝の弥勒菩薩像がある広隆寺です。

さすが京都です。

私は即座にここに決めました。

しかし経験の無いことは怖いことだと知るのは

入学式の前々日に来て下宿に泊まってからでした。

(続く)