味覚

コーヒーは嗜好品です。

その好みは当然人によってさまざまです。

これがおいしい、これが不味いは人によって違いますから

多数決によってより多くの人がおいしいというものが

世の中でおいしいと認知されます。

それはそれで良いので

より多くの人からおいしいと言われるコーヒーを作るのが私の仕事です。

とjころが厄介なのは同じ人でも好みが変わることです。

年が経つにつれて徐々に変わっていくのなら問題ありませんが

日によって、時間によって、気分によって、食べ物によって

他人の意見によって変わるので対応するのは至難の業です。

以前ある喫茶店のオープンに立ち会った時のことです。

オープン前に色々試してもらい、ある定番のブレンドに決定しました。

そして2週間くらいそのブレンドを納品していたら

突然電話がかかってきて

「今回のコーヒーは苦すぎる。今までのと全く違う。

私だけでなく皆も言っている。」

と言われました。

慌てて飛んで行き、そこで飲んでみましたが問題ありません。

でも納得してもらえないのでそのブレンドの配合を変え

少し柔らかめの味に変えて持っていきました。

するとその人は

「これ、これ。これがオープン前に飲んだ味だ。」

と言います。

その配合のブレンドを作ったのは今回が初めてです。

人の味覚はいい加減なもので一人が自信をもって言い切れば

他の人は

「そう言われればそんな気がする。」

となってしまいます。

その店にはそれからそこだけのブレンドをずっと持って行くようになりました。